【前回の記事を読む】「息子は殺されたんだ」――死因は急性アルコール中毒だった。飲めない酒を無理に飲まされ…
第四章 サンタクロースが桜木家に
四
「寺坂君、君の命はもらったよ。そこでだ。君は今日から家に住み込んでくれないか。まあ、ばあやが一人いるが、もう年だし力仕事は無理だからなあ。当分、掃除や何や、時には母さんの買い物の付き合いとかな」
「そんなことを私に」
「会社で手が欲しいときには駆り出すが、他の者の手前、わしの遠縁で、親に頼まれて預かったことにしよう。いいかな」謙志郎はうなずいた。
「年が明けたら忙しいぞ。まず、定時制だが学校に行ってもらう。次に車の免許を取って、わしや母さん専用の運転手になってもらう。次はいよいよ会社の仕事だが、何か異存はあるかね」
「が、学校ですか……。こんな私にそんなにまで……」
謙志郎はただ感涙にむせぶばかりだった。
「や、やります。どうかよろしくお願い致します。身を粉にしても働かせていただきます」
謙志郎は二人の前に深々と頭を下げた。
「母さん、明日はクリスマスだなあ。さすがのサンタクロースもプレゼントが大きすぎて運べなかったんだなあ。自分から歩いてきてくれたじゃないか。わしらもこの年になって、初めてサンタクロースにプレゼントをもらったよ。わっはっはっ」
この日から、出会ったばかりの親子が寝食を共にし始めたのだった。