などと、ベッド上のA子が笑って話すので、一緒に大笑いし、こんなに明るいならきっと治るだろう、と皆安心したものだ。その後何日もたたないうちに彼女は子宮ガンで死んでしまった。卒業の翌年だった。
一周忌に花を持っていったのは理緒子とあさみだけだ。帰りに二人で街をぶらぶら歩いた。
「これは、誰にも話さなかったことだけどね」
急に理緒子が顔を寄せてきて低い声を出した。
「もう時効だから話すけど、あんたはわかんなかった? A子の手癖が悪かったこと」
その意味の重さに、あさみは頭をガンと殴られたような衝撃を受け、顔の筋肉までピクピク引きつった。
「あれは一種の病気なのね」
理緒子は声を普通に戻してアイスクリームをなめ、行き交う人々の頭をざわめく波がしらででもあるかのように打ち眺めた。
「どうしてわかったかと言うと、A子の筆箱の中にパーカーの万年筆があるのを見つけたのよ。ひと目見て、あっ、あたしのだ、ってすぐわかった。
だけどパーカーの万年筆って、同じようなのがほかにもあるからね、絶対あたしのだっていう証拠はなかったわけ。