【前回の記事を読む】何日もたたないうちに彼女は子宮ガンで死んでしまった。「こんなに明るいならきっと治るだろう」と皆安心していたのに…
2章 一本道と信じた誤算
時計を見た。次のワークショップが始まる時間だ。山川がさぞ待ちあぐねていることだろう。
しかしあさみは、いつもにない理緒子の頼みように、一旦ここで立ち止まり、頭をニュートラルにして考えてみてもいいかもしれないと思った。
もしや理緒子は置いていかれて寂しいのではないか。するとにわかに目の前に道が開(ひら)け、自分がジコチュウなことを言っていること、簡単な解決策がいくらでもあることに気がついた。
なんといっても理緒子は、失いたくないと思うただ一人の親友だ。山川とはこの先一緒に過ごす時間が山ほどある。
「そうね……あたしが悪かったのかもしれない。感情的になって、あんたを追い返そうとしたりして」
あさみは、それと知らずに入れていた体の力を抜いた。
「そうだわね、あんたの言うとおり、今夜は……あんたと一緒に帰ることにしましょうか」
もう一度時計を見た。
「だったら、理緒子、ダンスが終わるまで椅子に座って待っててちょうだい。パーティーは8時に終わるの。8時半にはここを出られるから、それからどこかお店に入って二人でお食事しましょう。それでいい?」
理緒子も腕を返して時計を見た。
「いま3時。せいぜい待って6時だわね。退屈で死んじゃうでしょうから、それ以上はダメ」
「いいわ。じゃ、6時まで」