──それが発覚したのは、中学2年生のときだった。

体育の授業で校庭を走っている時、その違和感に気づいた。それは成長期に胸が膨らむ痛さではなく、ただただいつもと違うというだけの感覚だった。

当時のくるみは自分の身体に無頓着で、自分は健康体だと信じてやまなかった。そして、思春期であることもあいまって、親に自分の胸の違和感について話すのについて羞恥心があった。

そのせいで、病院に行った頃にはすでに、『手遅れ』の状態だった。初めての診察を、今でも鮮明に思い出せる。

最初に行った小さな地元の病院からはすぐに大学病院への紹介状をもらい、初めて大学病院に行くそのときは母親が付き添った。

県内でも唯一の国立大学病院だったが、建物は古く廊下もやや暗い。診察室に入ると、威圧感のある50代くらいの男性医師の後ろに、数名の女性看護師が立っていた。

「はい、水瀬くるみさん。そこに座って。前の病院からの紹介状では、左の胸になんかしこりみたいなもんがあると。普通にしとるときは、特に痛みもないって書いてあるけど、それは特に変わらへん?」

「はい」

診察室の空気に気圧されて何も言えないでいるくるみに代わって、母親が答えた。くるみは14歳の心で、こんなに人がいる前で胸をさらさなければならないことに強い羞恥心を抱いていた。

「ほんなら、上着をちょっとめくってもらえる? もうブラジャーはしとるん?」

「ブラジャーは一応しとるよな、あんた」

「……うん」

「ああそう。ならそれも一緒に持ち上げてもろて」

次回更新は8月14日(木)、11時の予定です。

 

👉『訳アリな私でも、愛してくれますか』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】見てはいけない写真だった。今まで見たことのない母の姿がパソコンの「ゴミ箱」の中に

【注目記事】離婚した妻と娘と久しぶりに再会。元妻から「大事な話があるの」