【前回の記事を読む】それが発覚したのは、中学2年生のときだった。明らかに普通とは違う胸の違和感。病院に行った頃にはすでに『手遅れ』であった

訳アリな私でも、愛してくれますか

カルテになにかを書きながら、おざなりに医師がいう。もちろん幼いくるみにも、毎日人の裸を見て診察している医師にとってはなんら気にもとめないような仕事の1つだということはわかっている。それでも、彼女の感じている羞恥心や進まない気持ちを汲む様子がないのを見て、あまりにも切なくなったのを覚えている。

母親が後ろから上着をたくし上げ、くるみの脇にやってきた看護師が薄いそのスポーツブラを引き上げた。

「今いくつや?」

「14歳です」

「あっそう、はい。ほんなら触りますねー」

男性医師はためらいなくくるみの胸に触れた。成長のさなかにある胸は、押されるとひどく痛む。それが成長痛なのかしこりのせいなのか、判別もつかなかった。しかし、右胸に比べて痛みが酷いわけでもない。ただ、あるのはしこりだけだった。

「これ痛い?」

「痛いです……」

「うーん、確かにしこりはあるなぁ」

片方の手で胸を触りながら、もう一方でカルテになにかを記していく医師。その医師の目を見られなかった。目を見ると、1人の人間として認識される気がする。どうにかして、医師にとって他と変わりのない、見分けのつかない『患者』として紛れようとした。

今思えば、上京してきてすぐコンビニで生理用品を買うしかない時、男性の店員さんがそれを黒いビニール袋に入れるたびに目をそらしていた感覚と似ている。相手にとって、ただの『客』としてさばかれる方がまだいい。

「経験したことあるか? セックス」

「……してません」