「けど、嫌やったよね。本当にごめんな、あの先生ちょっと言葉きついから」
その看護師の気遣いが、くるみの心にゆっくりと染み渡る。この気持ちを打ち明ける相手もいなくて、くるみは不意に泣きそうになった。
「私、……本当にしてないです」
「そうやんなぁ。それはな、私にもわかる。ほんなら、先生にもちゃんと私から言っとくな。心配せんといて、次来たときもそういうこと聞かんように先生に言っとくから。次は安心して来てな」
「はい……」
「検査、ちょっと怖いかもしれへんけど、原因見つけるのは早いほうがいいからな。そうしたら、治療も早く始められるから」
「ありがとうございます……」
「ほんなら、頑張っていってらっしゃい」
看護師はくるみに小さく手を振って、去っていった。もとの診察室に入っていくのを見送ると、隣から母親に声をかけられる。
「くるみ、次の検査、地下やねんて。すぐ受付せなあかんみたいやから、はよ行くよ」
「うん」
くるみは母親から顔を背け、少しだけ溢れそうになった涙を袖で拭った。
そして、後日。
くるみから通院の際の話を聞いた千春が会社の休みを取り、検査結果を一緒に聞きに行ってくれることになった。
そこで医師から聞かされたのは、乳腺が膿んでいて、その膿を出すための手術を何度か行うこと、そして胸が完全な形に戻るのは難しいだろうということだった──。
次回更新は8月21日(木)、11時の予定です。
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