【前回の記事を読む】その時ドレスがひっかかり、左胸にたくさん詰めていたパッドが舞台上にはらはら落ちた。妙な冷静さで、急いで拾ったが…
訳アリな私でも、愛してくれますか
それから数日後。
(腫れ物扱いだな、みんな……)
あの日の翌日、会社に行くかどうかものすごく悩んだ。それでも、あのことがきっかけで会社を休むのは違うとも思った。翌日行かないと、そのあとものすごく行きづらくなることも容易に想像できた。
結局、休むか行くかの選択ではなく、辞めるか行くかの二択であることに気づいてからは、行くしかないということもすんなり理解できた気がする。
「課長、見ていただきたい提案書があるんですけどいいですか?」
「ああ、ちょっと待ってな……これを、上書き保存して……」
課長がパソコンを操作している間、ふと隣の島の先輩に目をやる。目があった瞬間、笑い者にするような侮蔑の含んだ笑みが浮かび、すぐに隣の男性と話し始めた。
(私、本当に見る目ないの変わってないな……)
「で、提案書ね」
「はい。あるクライアント様から紹介いただいたんですが、この内容で見積もりをだしてもいいかお伺いしたく……」
「おっ、えらい大きいクライアントだな」
「はい。ご紹介なので、そのぶん少し見積もり価格も下げて提出しようと思っています。今月の目標には達するので……」
あの日のパーティーに運良く参加していなかった顧客から、大きな会社を紹介された。今回ばかりはくるみも気合が入る。地道に続けてきてよかったと、先日の出来事以来はじめて報われた気になった。
「うん、これでいいよ。先方に提出しようか。相手からは、いつごろ回答来る?」