【前回記事を読む】【勿来から銚子までを歩いた記録】勿来漁港~五浦海岸~大津岬…「ここにはアメリカへ風船爆弾が放たれた攻撃基地があった。」

第一章 常陸の海岸を歩く

2005年に勿来から銚子までの区間を10日間で歩いた記録である。

2 高萩

茨城の海岸を北から南に歩く計画の二回目は、前回の続きとして磯原から出発した。この日も朝8時前には駅前から歩道橋を渡り、大北川を越えて民家をぬけるとすぐに砂州を形成する海岸に出た。

北のほうに天妃山(てんぴさん)のこんもりとした森が見える。日差しからは春が近いことが感じられる。気温は低い。

寄せては返す波が砕け散る音を聴き、波ぎわを歩いていて、打ち寄せられた貝殻とともに小さな鳥の足跡が砂に残る。波間に浮かんでいる海鳥もいる。このような砂浜が長く続いている。

中郷町の塩田川の河口に出た。渡れそうな川幅だが、迂回することにした。一旦国道6 号線に出て、橋を渡って再び海岸に出てから砂浜歩きを続けた。海に浮かぶ黒い鳥のように見えるサーファーは、ひたすら大きな波が来るのを待っている。

高萩の海岸は急崖である。砂浜の海岸はここで岩場となる。岩には青海苔が張り付き、それが波に洗われて揺れている。行き止まると、そこに崖を行く道がつくられていて、登ると東屋に出た。

ここからは「万葉の道」と称する散策コースが整備されている。断崖の上を歩くこのコースは、思いのほか楽しめる道である。

途中足がすくむような海を見下ろす断崖に出た。水平線に大型貨物船を浮かべた太平洋が丸く青く広がる。

万葉の道が終わると高戸海岸に出る。誰もいない海の南側には道らしきものがあり、その入口には黒い自転車が停めてあった。

高い崖の上から糸をたらして魚釣りをしている地元の人の自転車であることがあとでわかった。この道も万葉の道と同じように変化があって面白く、海岸ながら山歩きの雰囲気が味わえる。