【前回記事を読む】茨城の海岸を北から南へ歩く――どこまでも続く砂浜。寄せては返す波が砕け散る音、打ち寄せられた貝殻、鳥たちの足跡…

第一章 常陸の海岸を歩く

2005年に勿来から銚子までの区間を10日間で歩いた記録である。

3 鮎川

畑から下っていくと小貝ヶ浜の海岸である。砂浜に下れるような道はなく、住宅街の自うみう動車道を行く。天然記念物に指定された海鵜の渡来地で海岸に出られた。二見岩が見え、その背景には日立の町にある工場煙突から煙が上がっている。小貝ヶ浜にも遊歩道があり、途中には波切不動尊や蚕養 (こかい)神社がある。

十王川を渡り、川尻海岸に出る前に自動販売機で清涼飲料水を買う。ここには茨城では超有名なMコーヒーがあった。甘すぎる缶コーヒーではあるが、地元茨城では人気商品である。

これも地元茨城では有名なHP「茨城王」では、

「コーヒーと言えばM、Mと言えばコーヒーです。(言い過ぎ)茨城と千葉にしか存在せず、別名「ちばらきコーヒー」などとも呼ばれています。(※注:厳密には栃木でも販売されています)

茨城に生まれし者が、必ず最初に飲むコーヒー。それがMコーヒーなのです。(中略)Mは子供と大人を繋ぐ「かけ橋」と言っても過言ではありませんでした」と紹介している。

驚いたことに、自動販売機の隣にある籠には、Mコーヒーの空き缶が山となっていた。土産に一缶買って帰ろうかとも思ったが、家族には「何これ?」と言われるのがおちなので止めた。

川尻海岸から小木(おぎ)津浜を過ぎて、自動車の走る道を行く。再び海岸に出る。このあたりになると自然の海岸は少なくなり、コンクリートの護岸堤防やテトラポッドばかりが目に付くようになり、前回の高萩コースのように人に勧められないのは残念だ。海鵜が憩う小島がある。

鵜は陸地を眺めながら人間の活動をどのように見ているのだろうか。JR日立駅東側の海岸では国道のバイパス道路を造っていて、工事現場は通行止めになっている。隣のフェンスで囲まれた運動場からは子供たちが野球の試合をする歓声があがり、空き地では小学1年生くらいの女の子と男の子が野球の真似ごとをしていた。

鮎川を越えると日立電鉄の鮎川駅に至る。ここが本日の終点だ。日立電鉄はここ鮎川町と常陸太田を結ぶ私鉄である。今年の3月末をもって廃止されることになっている。

駅には鉄道ファンが来ていて、盛んに写真を撮っている。赤い車輛も線路も古びていて、長年の雨風に耐えて乗客を運んだことがうかがえる。長いことご苦労様と言いたい気分になった。       (2005年3月13日)

日立電鉄の鮎川駅構内から