医療事故調査制度創設に関わった者として、医療事故調査制度がこのまま定着し、我が国の医療安全が高まることを期待し、後進の医療関係者には、われわれが体を張ってつくり上げた現場中心の医療事故調査制度を権威主義的な第3次試案・大綱案的制度に引き戻すことのないように警鐘を鳴らしておきたい。

本改訂版でも、十分に意を尽くせなかった思いもあるが、本書が少しでも読者の参考となれば、望外の喜びである。

最後に、医療事故調査制度創設時から、共に行動していただいた方々、協力あるいは激励いただいた方々に謝意を表するとともに、われわれの意見に耳を傾けていただいた厚労省の方々に感謝申し上げたい。 

第1章 医師法第21条(異状死体等の届出義務)について
―医師法第21条は、異状死の届出義務ではない―

(1)医師法第21条に関する歴史的経緯

医師法第21条は、1906年(明治39年)の旧医師法施行規則第9条に始まる。現在と、ほぼ、同じ内容だが「異常」の文字が使われている。1942年(昭和17年)、国民医療法施行規則第31条となったときに、「異常」の文字が、状態を表す「異状」に替わっている。その後、1948年(昭和23年)に現在の医師法第21条となった。

旧厚生省も警察庁も旧内務省の一部であった。1947年(昭和22年)、日本国憲法が制定されたが、このとき、GHQの命令で旧内務省は解体された。戦後の混乱期で旧内務省解体という騒動の最中に制定された医師法第21条には、「異状死体等の届出義務」という警察への協力規定が残された。当時は身元不明死体等が多かった時代であり、警察への協力が欠かせなかったのであろう。

 

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