1章から3章はやや難解な話題も含まれているので、お急ぎの方は読み飛ばしてもかまいません。飛ばした方のために各章末に「まとめ」もつけておきました。

近年の疼痛学と疼痛科学の進歩で明らかになった重大な事実、それは「痛みは脳で生み出される。痛みの強さは必ずしも病気の重さを示しているのではない。痛みとは必ずしも病気の存在を示すものではない。そして、痛みは痛みのシステムの故障でも起こる」ということです。

「痛みのしくみ」を理解することは、皆さんにとっても痛みの治療を合理的に行い、成功させるためにとても重要になるはずです。


1 日本の臨床医を縛っているのは第一に保険診療制度である。医師は原則として「保険医」であり、保険医は保険診療の規則にしたがった治療しか認められない。仮にある患者さんに対し、新しい研究成果の薬や治療が効果があるだろうと確信し、事実、効果があったとしても、その治療が保険適用認可されていなければ、その医師に診療報酬は支払われない。一方、診療ガイドラインは遵守しなくてもおとがめはない。問題となるのは、ガイドラインの治療は一種の「標準治療」と見なされているので、ガイドラインで推奨しない治療を行った結果、深刻な問題が起こった場合に医師は批判を受けるかもしれないという点である。

2 たとえば湿布や温熱療法のエビデンス(RCT研究)はない。

3 委員会の専門家=権威、の意見が併記されたという点では、「先祖返り」したと言えなくもない。

【参考文献】

(3) 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会 腰痛診療ガイドライン策定委員会『腰痛診療ガイドライン2019』改訂第2版、南江堂、2019年

次回更新は7月22日(火)、8時の予定です。

 

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