「うちでも、何かやるんですか?」
「いや、それがな。今月末に会社の20周年記念の謝恩パーティーでもどうかと社長がおっしゃっている」
「謝恩パーティー、ですか?」
「社長の思いつきみたいでな、急遽やることになったんだ」
(もう決定事項なんだよね……)
謝恩パーティーでもどうか、と言いながら、結局決まったことなのだ。くるみは自分の表情が固くなるのがわかった。
「それで、うちは女性社員が少ないだろ? 水瀬にも、ホテルの会場で案内係をやってもらおうと思ってな」
「……私がですか?」
「他の部署からも何人か手伝いに行くことになってる。受付と、会場の案内だとかなんだとかをやってほしいらしくてな。よろしく頼むよ」
「……そのパーティーって、全員参加ですか?」
「そうだ。全社的に17時には仕事を終えて、会場に移動することになってる」
上がこうしたいと言えば、決定権はないらしい。
(これまで、胸元を見せる服は着ないようにしてきたのにな……)
友だちの結婚式も、成人式後の同窓パーティーも、すべて。参加したい気持ちもあったが、それよりも胸元を隠すことのほうが当時のくるみにとっては重要事項だった。
「おじさんに案内されるより、お客さんもいいだろう。たくさんお客さんを呼んでやるらしいから、そこで顔を売って営業にもつなげてくれるとありがたいなぁ、うちの課としても」
「……わかりました。失礼します」
次回更新は7月10日(木)、11時の予定です。