布石

違和感、第2波

夏を迎えるあたりから自分の使っていたものを北区の家に、こっそりと取りに帰ったりしたりしていた。

家に入ると家の中の何かが違う。色も匂いも微妙に違う。細かいことが目に入る。何やら派手なブラジャーが干してある。娘の物にしてはちょっとアダルトな感じだし、享子のブラ?

それにいつも享子の寝ている場所に何日も同じ荷物が置いてある。なら享子はどこに寝ている? この家では寝てないのか? 何かおかしい。謎と疑問が疑惑に変わる。

そうなるとトシカツは自宅の周りを探索し始めるのだが、仕事もあるし24時間張り付くこともできない。

トシカツは享子にラインを送った。まだラインはつながる。

「昨日の夜、どこかに行っていた?」「どこにも行ってないよ」と享子が答える。

トシカツには一計があるのか「家にいた?」と聞いた。すると享子は「家で寝ていた」と答えた。

実はトシカツはその夜、享子の車が家にないことを確認していた。裏は取れていた。

トシカツは将棋の王手を掛けるように「ウソつき!」とラインを送った。ラインのやり取りでも享子が一瞬凍りつく感じが伝わってきた。語るに落ちる? なのか? 

「どうでもいいじゃん!」

享子の動揺がラインでもわかる。

やはり何かある。もうトシカツの頭の中は疑惑でいっぱいになる。何? 悪い想像ばかりが頭の中を何回もよぎる。ノイローゼになりそうだ。