それを読むと、細めていた加藤の目が少し怒ったように大きく開いた。
〈アルジェリアノニュウサツガセマッテイル テストタイヤノヒョウカヲイソグ コンカイノチョウサデケツロンヲダサレタイ カイガイブチョウ〉
「結論を出せと言われても、走り込んでいなければ無理だ」
加藤は独り言を言いながら、
「井原さん、ハッシメサウドのテストタイヤが現在何キロぐらい走行しているかわかりますか?」と聞いた。
「それを石油公団に問い合わせているのですが、返事がないのです」と、すまなそうに言った。
「現地へ行ってみないとわからないでしょうね。出来るだけ早くハッシメサウドへ行きたいのですが、調整していただけますか」
「実はそのつもりで、この車で明日現地へ向けて出発することで準備しています」
「この高級車で行けるんですか。ありがたいですね」
「はい、それで私が勉強がてら同行させていただくことで北山所長に指示されています。何でもお手伝いさせていただきます」
「それは心強いです。車で行くとなると長旅になりますが、ホテルはどうなりますか?」
「明日の夜はハッシメサウドに近いオアルグラのホテルに泊まりますが、その後は現地の石油公団の宿舎に泊まることになります」
井原が答えたところで、シトロエンDSはアルジェの街の雑踏の中を通り、オフィスの駐車場へすべり込んだ。
次回更新は6月30日(月)、21時の予定です。
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