「サハラ砂漠のど真ん中に石油、天然ガスが埋蔵されている。これがこの国の生命線だというのは前に言った通りだ。その石油や天然ガスの採掘基地への資材はトラックで運搬しなければならない。問題はそこへ行くための道がないということだ。トラックは砂漠の中の道なき道を走らなければならない。

タイヤの輸入権を一手に握っているアルジェリア石油公団の担当官によれば、それに使われるタイヤは特殊だそうで、フランソワタイヤしか使えないらしい。その他のタイヤは砂漠のど真ん中で故障してしまう。そうしたらトラックは動きがとれなくなり、ドライバーは危険にさらされてしまうのだ。

只、唯一日本の〈ニホンタイヤ〉だけがそれに耐え得るタイヤを持っており、現在石油公団の関係先で性能のテストをしている」

「それは楽しみですね。テストの結果、ニホンタイヤが当市場に受け入れられるとなった場合、我々七洋商事アルジェオフィスの取り扱い商品とさせてもらえるのでしょうか?」井原は意気込んで聞いた。

次回更新は6月12日(木)、21時の予定です。

 

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