【前回の記事を読む】動揺した担当医が「子宮筋腫がなくなっている。手術の必要もなくなった。ありえない」と…まさか本当にあの不倫エセ住職が治した!?
第一章 夫の脱サラと妻に起こった不思議なこと
「治ったでェ」
病院を脱出(だっしゅつ) した私は、私の手術を心配しながら店で働いている夫の元に帰るより先に、手術をしなくて済(す)んだことへのお礼(れい)を、ご住職様にするべきだと思ったが、寺の電話番号を知らない。
一刻病(いっこくびょう)の私はまずは車で港(みなと)に行った。
大阪行きのフェリーに乗る為ではない。せめて、大阪方面に向かってお礼(れい)だけでもしたいと思ったからだ。
港には来たものの、ヒドく方向音痴(ほうこうおんち)の私は大阪方面がどちらになるのか分からない。
方向が少し変わるだけで朝鮮半島(ちょうせんはんとう)の方向を向くかもしれないし、中国の方向を向くかもしれない。
ここは、エイヤー、と決めるしかない。そちらであろう方向に車を止め、海に向かって車の中から手を合わせた。
車の中で座(すわ)ってのお礼は少々失礼(しつれい)だとも思ったが、そうかといって、海に向かって手でも合わせようものなら、それこそあらぬ方向に詮索(せんさく)される。それも厄介(やっかい)だ。
そして、港からのご住職様へのお礼の次は、ご住職様とのご縁(えん)を作って下さったお姉様へのお礼だ。
お姉様へのお礼は直接(ちょくせつ)電話で伝えたいと思い、早速(さっそく)海を後にして、店の電話ではなく静かに話せる自宅(じたく)の電話へと向かった。