ご住職様と同様(どうよう)に、胡散(うさん)臭(くさ)くて何とはなしに犯罪者 (はんざいしゃ)の臭いのする姉から、一瞬(いっしゅん)にして尊敬(そんけい)に値(あたい)するお姉様に変わっていた。
電話に出たお姉様は、意外(いがい)にも私の子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)の件は知らなかった。
私はてっきり、あの後ご住職様から聞いて知っているものとばかり思っていたのだが。
私からのかいつまんだ一部始終(いちぶしじゅう)を聞いたお姉様は、とても意外(いがい)なことに、驚(おどろ)くことなくむしろ淡々(たんたん)と、
「あの住職の力の凄(すご)さは色々と見てきて知っているけど、今回のも凄(すご)いね。手術しなくて済(す)んでよかったね。妹が喜(よろこ)んですぐにお礼の電話を掛けてきたことを、住職には私からちゃんと伝えるからね」、と。
ようやく、心配しながら店で仕事をしている夫の元に私は戻(もど)った。だが、今頃手術を受けているはずの妻が戻ってきたのだからビックリしたのは、夫。
夫にはすぐに事態(じたい)の全容(ぜんよう)が掴(つか)めない。掴(つか)めないのは当たり前。医者ですら掴(つか)めないのだから。
「どうしたんだ! 何で帰ってきたんだ!? 手術するんじゃないのか! 何っ!? 何が消えたって!?」。
しばらくしてようやく事態(じたい)の全容(ぜんよう)が掴(つか)めた夫は、妻が手術を免(まぬが)れたことへの深い安堵(あんど)の気持ちを体全体で表(あら)わした。
二人で感謝の気持ちに浸(ひた)りながら、しかし同時に、確かに有った筋腫(きんしゅ)が、跡形(あとかた)もなく消えたという現実離(げんじつばな)れをした現実を、どう受け止めればよいのかとても戸惑(とまど)い、早速(さっそく)いつもの夫婦二人会議を行った。