【前回の記事を読む】姉とご住職様の不倫…最初は不快だったが“あの体験”以来「不倫もお洒落」と感じる始末。私ももっと、ご住職様の事を知りたい
第一章 夫の脱サラと妻に起こった不思議なこと
姉からの誘い
ましてや、夫の立場からすれば、妻を通して医学や科学では説明のつかない有り難い体験をしたからとはいえ、やっぱり、胡散臭(うさんくさ)さの拭(ぬぐ)えない姉が絡(から)んだ話だ。それでもって、母親が体験 (たいけん)した不思議(ふしぎ)で有り難い話を全く聞かされていない子供達。四面楚歌(しめんそか)の臭(にお)いがしてきたが大丈夫か。
私が体験した不思議な話を、慌(あわ)てて今子供達にしたところで、夫は勿論 (もちろん)、子供達とて、不思議で有り難い体験と私が大阪に行くことは、全くもって別の話だと考えるはずだ。となると、私の進む道は閉(と)ざされた、と思ったら、いやはやどっこい、道は二つも有った。
一つは、無言(むごん)の夜逃(よに)げ。もう一つは、強行突破(きょうこうとっぱ)。視界(しかい)が少し明るくはなったが、ここまで来ると、これはもはや、持病(じびょう)の一刻病(いっこくびょう)どころの話ではない。
心の針(はり)が、青色の一刻病ゾーンを通過し、群青色(ぐんじょういろ)も振り切り、一気に危険区域(きけんくいき)に入ったかと思うと、針(はり)は、赤色の次の最終色(さいしゅうしょく)、深紅色(しんくいろ)で止(と)まった。それ以上はない。強行突破(きょうこうとっぱ)と決定(けってい)。
まずは先に夫に言った。「住職と姉が行う慈善事業(じぜんじぎょう)に私も参加したいので、一人で大阪に行く」、と。強く反対(はんたい)された。当然(とうぜん)だ。
次に二人の子供達に同じことを言った。想像以上(そうぞういじょう)の猛烈(もうれつ)な反対を食(く)らった。ごもっともだ。
正気(しょうき)ではないかのような意味不明(いみふめい)の突然(とつぜん)のダイナマイト発言(はつげん)に、家は大揺(おおゆ)れに、揺れに、揺れた。そして、揺れついでに、遠く離れて暮らす両親には、大阪到着後に事後報告(じごほうこく)をすると決めた。
だが、家の中に何ともいえないどんよりとした暗雲(あんうん)が立ち込めた状態にもかかわらず、何故(なぜ)か夫はすぐに大阪行きの飛行機のチケットを用意してくれたのだ。私一人だけで大阪に行くチケットを、どんな気持ちで夫が用意してくれたのかを思うと、申し訳無さで有り難うが言えなかった。顔を上げることすらできなかった。
だが、図々(ずうずう)しくも、本当に図々しくも、慈善事業が軌道(きどう)に乗るまでの生活費(せいかつひ)がいくらかでも欲(ほ)しい。しかし、顔すら上げられない中、とてもじゃないが、ついでにお金も下さいなどと死んでも言えない。困(こま)った。