【前回の記事を読む】子宮筋腫が消え、手術もしなくて済んだ。夫はビックリして「どうしたんだ! 何で帰ってきたんだ!?」

第一章 夫の脱サラと妻に起こった不思議なこと

姉からの(さそ)

バツイチのお姉様はご住職様とは不倫(ふりん)の関係だと当初より聞いていて、当時(とうじ)、妙(みょう)な部分に融通(ゆうずう)の利(き)かない性格(せいかく)だった私は、不倫という言葉を耳にすると、何かが腐(くさ)ったような変な臭(にお)いを嗅(か)いでしまいそうな気持ちになり、とても苦(にが)手(て)だったが、今回の不思議な体験以来、不倫もお洒落(しゃれ)に感じる始末(しまつ)。人間、ここまで変身(へんしん)するものなのか。

経済的にかなり余裕(よゆう)があるらしくお姉様から連日連夜(れんじつれんや)電話が掛かってくるようになって十日ばかりが経過した頃だっただろうか、さすがにお姉様の電話代が気になり、私の方からも掛けるようにした。

何たって大阪・九州間の電話だ。電話代が気にならないわけはないのだが、それよりも何よりも、ご住職様の不思議な力に興味(きょうみ)津々(しんしん)の私にとって、電話代は二の次だった。

子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)が消えた時の話や、他の人達への不思議な力の話の他、時折(ときおり)、我が家の経済情況(けいざいじょうきょう)の質問がお姉様から有った。

私は聞かれるまま正直に、長女の短大(たんだい)の授業料(じゅぎょうりょう)の支払いがやっと終了(しゅうりょう)したばかりだが、今度は長男の大学の支払いが始まるので、今後も引き続きギリギリの生活だと答えたりしていた。

以前の私だと、姉に我が家の経済状態を聞かれようものなら、何を差(さ)し置(お)いても即座(そくざ)に警戒態勢(けいかいたいせい)をとっていたが、この時の私は、他でもない電話代を気に掛けてくれる優しいお姉様だと思っていた。

人間、ここまで変身(へんしん)するのだ。

大阪・九州間の夜(よ)毎(ごと)の電話は、二ヶ月、三ヶ月と続いていた。そんなある日、夫が電話料金の事を私に言った。

「三ヶ月前の電話代が三万円。先月、五万円。今月、七万円。異常(いじょう)じゃないか?」、と。私はそれを聞いて血(ち)の気(け)が引(ひ)いた。声も出なかった。

ただただ申し訳なくて心から夫に詫(わ)びた。これ程までの高額(こうがく)な電話料金になるまで心ここにあらずの私だったことに今さらながらようやく気付き、「電話はもうやめよう」。とすぐにお姉様に伝えると、お姉様はまたもや予期(よき)せぬことを言い始めた。