その主な論点には、「ヘラクレスの柱」が本当に地中海西端のジブラルタル海峡にあったものかという位置の解釈をめぐる問題と、アトランティス帝国を滅ぼし海中に沈めたとされる洪水の年代の問題があります。

その議論の中で、多くの考古学者は、アトランティスの滅亡の物語が紀元前一五二五年ごろにあったエーゲ海のサントリーニ島の大規模な火山噴火と関連したものではないかと考えています。

サントリーニ島(図2)は、ギリシャの首都アテネから約二〇〇キロメートル南東のエーゲ海南部に浮かぶ直径約一〇キロメートルの円形の海を囲むような形をした島で、紀元前一五二五年ごろに大噴火を起こしたカルデラ火山の山頂が海上に出ている島です。

このサントリーニ島が大噴火したときには津波も起こり、その津波によってクレタ島のミノア文明が滅びました。そのため、この噴火は「ミノア噴火」と呼ばれ、アトランティスの伝説と結びつける人が多くいます。

しかし、この事実は、プラトンが示したアトランティスの年代と大陸の位置や規模が相当に違うことから、アトランティスではないという人もいて、アトランティス大陸の謎はまだ解明されていません。

 

二 最終氷期の海面変動と沈んだ大陸

最終氷期の海岸線

幻の大陸、ムー大陸とアトランティス大陸が存在していたとされる今から一万数千年前には、大陸に氷床や山岳氷河が広く発達していました。

この最終氷期(ウルム氷期)は、今から約七万年前から地球の気温低下が始まって約一万七〇〇〇年前に終了し、そのもっとも寒かった時期(最寒冷期または最盛期)は今から二万一〇〇〇年前といわれています。

このウルム氷期最盛期には、大陸に氷床として相当な量の水分が固定されたために海面が低くなり、現在より海面が約一〇〇メートル下がりました。したがって、今から約二万年前の海岸線は、現在の海面より約一〇〇メートル低いところにあったことになります。


引用文献

【1】アンドレーエヴァ E.J.(1963)『失われた大陸』.〔清水邦生訳〕,岩波新書,岩波書店,316p.

 

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