【前回の記事を読む】沈んだムー大陸に動物たちは渡ったのか?最新科学で読み解く“失われた陸地”の真実

第一章    伝説の大陸と最終氷期の大陸

一 伝説の沈んだ大陸

ムー大陸

現在、最古の文明として確認されているものの一つに、メソポタミア文明の基礎となったシュメール文明があります。それは今から七三〇〇年前ごろに始まったといわれています。

ここでは、原始的農業を経て灌漑技術が生み出され、都市ができて寺院ができ、冶金技術も生まれ、神官階級が文字を使用して、いわゆる人類の歴史が始まりました。

チャーチワードは、ムー大陸には今から数万年前から栄えていた文明があったとしています。しかし、このことは現在知られている文明の始まりよりも、相当に早い時期にあたります。

また、ムー大陸についてチャーチワードがその存在の根拠とした資料自体の多くが、信憑性が低く、証拠として示された遺跡や遺物の中には実際に存在しないものも含まれていました。このようなことから、現在ではチャーチワードが示したムー大陸の存在が否定されています。

アトランティス大陸

アトランティス大陸は、古代ギリシャの哲学者プラトンの著書『ティマイオス』および『クリティアス』の中で記述された、伝説上の広大な大陸とそこに繁栄したとされる帝国のことです。

プラトンによれば、その大陸は九〇〇〇年前ごろに海中に没したと記述されています。プラトンは、紀元前四世紀ごろに生きていた人なので、アトランティス大陸が海中に没したのは、今から一万一四〇〇年前ごろになります。

アトランティスについてのプラトンの記述では、巨大なアトランティス大陸はジブラルタル海峡にあったとされる「ヘラクレスの柱」のすぐ外側にあり、そこにあった帝国は豊かで強い軍事力をもち、地中海西部を含んだ広大な領土を支配していたとされます。

しかし、領土の拡大を目指してギリシャを侵略したのが失敗して、その直後に起こった地震と洪水でアトランティス大陸は海中に沈み、帝国も滅亡したとされています【1】

アトランティス大陸については、大西洋を「Atlantic Ocean(アトランティスの海)」と呼ぶヨーロッパの人たちの多くが関心をもち、それがどこにあったかということについてさまざまな説が出されています。