【前回の記事を読む】「立替金の回収(売上)」と「立替金の支出(費用)」という視点で経営と資金繰りを考えることを提案
では、第1章「経営の本質」から始めましょう。
第1章 経営の本質と立替金の視点
この章では、「経営」とは何かを「立替金の視点」から再定義し、成功する経営のキーポイントや経営者の役割と責任について考察します。
1 経営とは何か
経営とは、組織の目的を達成するために資源を効果的に管理し、成果を最大化するプロセスです。伝統的な経営理論では、収益の最大化やコスト削減が主な目標とされていますが、本書では「立替金の視点」から経営を再定義します。
経営の定義にはさまざまな要素がありますが、本書で焦点を当てるのは、決算書を経営に活かす視点を習得することです。
ここでは、経営を次のように定義します。
経営とは、企業が商品やサービスを提供するために「立替金の支出(費用)」を行い、その提供によって得られる「立替金の回収(売上)」の差額(利益)を最大化する活動である。
この定義では、企業が支出した立替金をどのように回収し、利益を最大化するかが中心的なテーマとなります。
2 立替金の視点で見る経営
「立替金の視点」を取り入れることで、従来の売上や費用の捉え方とは異なる新しい経営観が浮かび上がります。
この視点では、すべての費用はお客様のために立て替えた支出とみなし、その立て替えた金額に対して適正な手数料を上乗せして回収することが経営活動の本質と捉えます。
また、この視点から見ると、赤字は「立て替えた費用をお客様から回収できていない」状態であり、異常な状況と認識すべきです。
多くの企業は、「コストは避けられない」「競争のために価格を下げざるを得ない」などと考えがちですが、これらは経営の問題を隠す言い訳に過ぎません。
具体的な課題の解決方法としては、以下の点が挙げられます。
立替金の回収の徹底:立て替えた費用をお客様から適切に回収できない場合、経営は継続困難になります。このため、経営者は回収可能なビジネスモデルを構築し、必要に応じて戦略的な撤退を検討することも重要です。
インフレを利用した戦略的判断:借入金が増え続ける場合、インフレを見越して赤字を抑える戦略も一つの選択肢です。