【前回の記事を読む】「待って…!!」生後3か月のビーグルがコンビニ駐車場で飛び出した…“まさか”と凍りついたその直後、店先に走り出し……

二日目 断薬

ふと目が覚め、目覚まし時計を見た。午前四時。昨夜、床に就いたのが十一時前だから、五時間も熟睡できた。しかも、薬に頼らず。もう少し寝てみよう。

すると一時間後、“クーン、クーン”と甘えたビーグルの鼻声に起こされた。

――何かあったのだろうか?

飛び起きて、一階のリビングに駆けつけた。真っ暗な部屋に微かな姿。ビーグルが扉の前で、ちんちんしながらジャンプしている。

私は急いで部屋中のカーテンを開けた。な、なんと、トイレトレーの上に汚物があるではないか。思わず笑いがこみ上げた。

――素晴らしい! まだ何も教えていないのに、お前は天才か?

扉を開けると、ビーグルが飛び出して抱きついてきた。何て可愛いヤツなんだ。壁掛時計の針は五時半を指している。二度寝もできた。

薬なしで、延べにして六時間以上眠ったことになる。こんな感覚はいつ以来だろう。私は感慨に耽り、“断薬”の二文字が脳裏に浮かんでいた。

――もしかしたら、できるかもしれない。

ビーグルとじゃれ合いながら、そんなことを考えていた。

六時二〇分すぎ、妻が起きてきた。

「おはよう。早いねぇ、オチビちゃん」

「あのよ、可南美。ちゃんとトイレさ、ウンチしてらっけ。まんず(とても)、めんこい(可愛い)やつだ」

「へぇ、偉いこと。お利口さんだね、オチビちゃん」

包丁の心地よい音が鳴り響き、やがて味噌汁の美味そうな匂いが食欲を誘った。

「お待たせ、ご飯できました。さぁ、食べましょう」

我々は六人がけのテーブルに座った。そして私は、ご飯にひきわり納豆をかけて頬張り、味噌汁で流し込んだ。

「あのよ、可南美。ビーグルの名前考えだども、喋ってもいいが?」恥ずかしくていい出せなかったが、実は前々から浮かんでいた。「“マーカス”って、なっただべ(どうだろう)?」

「マーカス? どういった由来なの?」

「実は、昔のハリウッドスターが飼ってらった、猫の名前だ」

遺作となった映画の撮影中、共演者の女優が彼に贈ったシャム猫で、不思議なことに、彼が事故死するほんの数日前になって、突然、友人に譲られたという逸話が残っている。私はその牝猫の名前を、(牡犬ではあるが)ビーグルにつけようと思いついていた。

「なるほど。あなた、あのリバイバル映画、よく観てたもんね」

こうして“オチビちゃん”だった彼は、晴れて“マーカス”に命名されたのだった。

八時、初めての朝食。前日、妻が用意した水でふやかしたドッグフードにカップ2目盛りのフードを新たに足し、スプーンでかき混ぜ出来上がり。

ケージのベッドで一休みしていたマーカスに差し出すと、鼻息も荒くかぶりつき、ものの数十秒で平らげた。

――いくらなんでも、早すぎだよマーカス。