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国道15号線南蒲田交差点付近の防犯カメラに帰宅途中の車が映っていたことで、田代正樹の線は消えた。

そのため、犯行の行なわれたマンションの防犯カメラに映っている田代に酷似した人物の特定が急がれたが、手がかりは全くなかった。

マンションの同じ防犯カメラに映っている第三の人物の容疑が濃くなっている現在、田代に似た人物の写真公開はプライバシー保護の観点からも時期尚早と判断されていた。

万一、第三の人物の容疑が晴れた場合に写真の公開捜査に踏み切ることになっており、田代正樹の線を追っていた宇佐見刑事たちの捜査班は今のところ手詰まりの状態であった。

しかし、そんな中で宇佐見刑事と佐伯刑事は、第三の人物の捜査に期待しつつも、防犯カメラに映った男の写真を見た時の田代正樹の表情から田代が何かを知っていると感じた自分たちの勘を捨てきれないでいた。

特に宇佐見は、田代を怒らせてしまった前回の事情聴取以来、なんとしても、もう一度写真に対する田代の反応を確かめたいと思っていた。

弁護士を立てるとまで言われたためこれ以上田代を刺激することは避けるべきだとしていた植村管理官も、田代のアリバイが成立したことで、それを本人に伝えることを口実に宇佐見がもう一度田代に接触することをようやく承知した。

次回更新は5月28日(水)、22時の予定です。

 

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