【前回の記事を読む】着物の袖口から垣間見える二の腕がなまめかしく、それを見たいが為に、タバコの使いっ走りを買って出ていた。色白で悩ましい仕草が…

1.仙一

ただ、昔の市議会のあほうな決議で、市電は廃線と成り、現在は残念ながら京都市内には冴えないバスと地下鉄が取って代わり、市電は走っていない。

市電が走っていた当時、京阪電車の上りが終点の三条まで地上を疏水と並行して走り、桜の開花の時期は、東福寺を過ぎると七条の手前から疏水(そすい)に沿い、京阪三条に向かって、電車の窓から桜並木を堪能出来た素晴らしい記憶が蘇る。

市電終点の中書島駅は1957年(昭和32年)に売春禁止法が成立するまでの間、柳町という花街で、売春街の提灯の灯りが、赤い怪しい光を放っていた。

因みに、日本で最初の市電の営業が始まったのは、1895年(明治28年)の伏見線で、七条から油掛(伏見区京橋)までの約7.12kmだった。

現在の京阪電車の始発駅は出町柳で大阪方面への淀屋橋行き以外に中之島行きも有り、途中京橋でJR環状線に乗り換え、梅田や天王寺へ行く事も出来る。京阪特急が丹波橋、中書島で停車をし、丹波橋で近鉄特急とも接続をして大変便利に成っている。

仙一が勤めている酒造会社の門を出て、直ぐの停留所から京都市内への買い物や遊びに行く時は、丹波橋通りを挟んで南側の駅から北方向へ約20分で京都駅前に着くが、当時往復券を買うと25円、片道だけだと13円。途中勧進橋で支線の稲荷行きの無料乗り換え券を貰い、東へは一駅で総本山伏見稲荷大社まで行ける様になっていた。