【前回の記事を読む】「強豪仁成学園中に、池永という名の投手がいる」…その男は、僕が手にした池永メモを引き継ぐべき男だった。宿命の出会いだった。
第二章 中学野球編
英児のマスコミ嫌いは承知の上だったから、池永雄太のことを話せば福田記者とのやりとりも話さないといけなくなる。だから今回は、英児には情報を入れなかった。違うクラスでよかった。隠しごとをしても、こっちの顔色一つでばれてしまうのだから。
坂本は谷本先生にDVDを見せて、いかに池永が優れた投手であるかを説明した。副主将である僕も同席の上だった。
「そうか、お前たちがそこまで言うほどのピッチャーなのか」
谷本先生は腕を組んで宙を睨んだ。
「沢村を先発で使ってください。お願いします。決勝戦まで温存しているような場合ではありません。この池永のストレート、135キロは出ていると思います。レギュラー組は、今日からバッティングセンターで140キロのマシン打撃をやるようにします。負けたら中学野球、終わりですから。先生、バッティングセンターのことなんですが、費用もかかりますし、どうしたらいいでしょう」
谷本先生は、坂本の権幕に押されてこう言った。
「バッティングセンターのことは、心配するな。私だって一応監督なんだ。こんなときくらいはOBに声をかけて寄付を集める。あ、そうだ、OBの市原和己がバッティングセンターを経営している。頼んでみるよ、サービス価格でやってくれって」
「有難うございます」