【事例3】
相談内容:「死にたい気持ちが収まらないので今すぐ死にたい」という相談。
相談者:50代男性
対応者:著者
対応場面:電話での相談対応
※著者は、この時精神保健や自殺対策に携わる保健所の部署に在籍
ある役所の部署の担当者から、 「相談者が今すぐ死ぬと言っている。保健所から電話してほしい。相談者の電話番号は○○」と保健所に電話があった。その担当者は、 「相談者が今すぐ死ぬと言っているので早く電話してほしい」 「それ以上は何も聞いていない」と言った。
事例3の問題点の分析
・自分は専門家ではないと門前払いしてしまう
確かに、「今すぐ死ぬ」と言われてしまうとどうしていいかわからず、戸惑ってしまいます。そのため、対応できそうなところを頼ることはよくあることで、然るべき専門家につなぐべきと考えることは間違いではありません。
しかし、相談者が匙(さじ)を投げられたと失望して、折り返しの電話に出なかったらと思うと、いたたまれない気持ちになります。専門家でなくてもできることはあります。
事例3の対応方法 さて、どうする?
・話を聴きたいというメッセージを伝える
私が折り返しの電話を入れるとすぐに出てくれました。興奮した様子で、死ぬためにいろいろな物を準備していることなどをまくしたてました。なかなかこちらが話の間に割って入る隙がなかったのですが、「今死にたいという気持ちはわかりました。せっかく電話をくださったので、それについて少しお話しできませんか」と何度か繰り返しました。
すると、3回目くらいのタイミングで、「何を話すんだ」と反応してくれたため、「死にたいって、いつからそう思っているのですか」と聞いたところ、「知らねーよ」と返答がありました。