【前回の記事を読む】妻のがん化学療法(XELOX)の第2クールが、延期になった。白血球の低下が基準を超えているらしい。1週間様子を見るという。

第六章 2016年

1月25日(月)
平穏な日々

平穏な日々が続いている。

18日、先週の月曜日、雪が降った。

予報がそうなっていたので未明に窓を開けてみると、既に数センチ積もり、なお降り続いていた。相当に積もると思ったが、夜明けとともにやみ、昼間にはほとんど融けてしまった。

19日、良子の白血球の数値が上がらず、抗がん剤の“点滴”は断念された。

良子の表情に不安はなく、むしろ解放された安堵の顔であった。B先生に、「点滴がなくなったら旅行できますね?」と言ったら、先生は、「どこへ行くんですか?」と聞き返した。「伊勢です」と答えた。「いいですねえ」と先生は言った。

一昨年は午年で、私は72歳の年男であった。それまでに伊勢へは何度も行っていたが、ふとその気になったとき行ったので、いつ行ったのか、よく覚えていなかった。

そこでその前年、平成25年に式年遷宮を迎えたことでもあり、平成26年の午年は1月に参拝し、毎年月をずらしてお参りすることにした。去年は2月に参拝した。今年は3月になる。そして次の午年、私の84歳は、再び1月の参拝になるのである。

伊勢では宇治山田駅近くのホテルで2泊する。

そして一夜は「大喜」という割烹料理店、一夜は「むら田」という鰻屋さんへ行くのが決まりである。大喜はそれなりに大きい店であるが、「むら田」は家族でやっている。最初の年、上の計画を話し、「来年は2月に来る」と言った。

昨年2月に行った。すぐには分からなかったが、話すうちに、「ああ」と思い出してくれた。

だから今年は、3月に行かなければならない。良子も楽しみにしている。