結婚して子供が二人生まれても十分なマンションを買い与えた。そこへ転がり込んで来たのがペルーの女だった。同棲を始めておそらく2月ほど経ってから、コオは彼女を連れてきた。私たちは驚いたが、私自身はコオの側に初めて女を見て、安堵の気持ちもあった。

年を聞くと21歳であった。スペイン系の可愛い娘で、私は好印象を持った。

4月にリマで結婚式を挙げた。びっくりするほどの人が集まり夜明け近くまで大騒ぎした。最初の頃、息子夫婦はよく来ていたが、そのうち間があくようになり、いつか寄りつかなくなった。

何となくおかしくなっている雰囲気は感じていた。そのうちにコオがマンションを出てしまった。一緒になって3年後くらいだったと思う。

自分の家から女を追い出すというのは分かるが、自分が出て行くというのがコオらしい。「追い出したら、あいつの行くところがない」と言う。私も、「邪険なことはするな。しかし期限は切れよ」と言った。

しかし離婚の成立には更に2年ほどかかった。離婚を引き延ばすほど彼女は住まいを確保できるからだった。自分の家なのだから乗り込めば良いのであるが、コオにはそのような闘争心がなかった。

彼女の方が慰謝料を求めて裁判を起こした。仕方なく私たちも対応した。結果は私たちの主張通り(つまり最初からコオが彼女に話していた額で)決着した。可哀想に弁護士費用だけ彼女の損失になった。明らかに質の良くない弁護士だった。

私は(おそらくコオも)彼女を悪くは思わなかった。それなりに一生懸命に生きる娘であった。ただ目的は国元への送金にあった。日本で子供を作り、家庭を築いていく気持ちは薄かった。彼女が出て行ったあとのマンションは、大損して売却した。

コオは真面目で優しい性格である。要領よく立ち回ることができない。人を押しのけてということができない。ひねくれたところがない。

これはあい子にも言えることで、私の日頃とはつながっていない。良子の影響としか考えられない。目端が利く、という能力が欠落している。

見ていて歯がゆいところはあるが、しかし私は、それを悪いこととは思わない。話は良子とコオがした。昔からそうだった。

私は年末に川崎の豆腐屋さんで買い込んであった生揚げを炙って、摺ったショウガを添えてやった。「こりゃ旨い!」と料理人が言った。

次回更新は5月6日(火)、20時の予定です。

 

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