【前回の記事を読む】【アイスランド】太陽が沈まない夏「白夜」、太陽のない生活を強いられる冬「極夜」。それぞれ3か月続き、不便なこともあるが…

第1章 自然・地理

絶景密度が高い絶景だらけの国

「火山と氷河が作り出す絶景だらけの奇跡の国、アイスランド」。これは旅行会社のパンフレット等でよく目にするフレーズだ。実際、「世界で最も美しい国」「一生に一度は訪ねてみたい国」といったランキングでは必ず上位にランクされる。

日本を含め世界には数多くの絶景スポットがあるが、それらの国とアイスランドの絶景にはどんな違いがあるのだろうか。この問いに正確に答えることは難しいのだが、アイスランドの絶景に幾つかの特徴があることは確かだ。

その一つは、やはり、壮大で圧倒的なスケールの自然美だ。

巨大氷河や莫大な水量で眼前に迫ってくる巨大な滝の数々、そして夜空を舞う神秘的なオーロラ。これらのスケール感や放出されるエネルギー感は、通常のカメラやビデオでは到底捉えきれない。

実際に現場で見て体感する必要があるのだが、その大自然を手の届くほどの間近で見られる、感じられることもアイスランドならではと言える。既述の通り、氷河はその末端まで容易に近づけるし、氷河内部に入ることも出来る。

巨大な滝も柵やロープで接近が制限されている場所は少なく、自己責任で間近まで行ける。神秘的なオーロラも運が良ければ街中で見ることも可能だ。

そして最大の特徴が、有名な観光スポットだけでなく、国中に無数の絶景が点在していること、換言すれば人口密度ならぬ「絶景密度」が極めて高いことだ。

車でリングロードと呼ばれる国土周回道路(国道1号線)をドライブすれば、緑豊かな牧草地とそこで放牧される羊や馬、漆黒のビーチと海に点在する奇岩群、巨大氷河とエメラルド色の輝きを放つ氷の洞窟、氷河湖に浮かぶ青白い氷塊、神々しいフィヨルドの山並みと海岸線、絵画から抜け出した様な牧歌的な村や町、湖や海岸を埋め尽くす野鳥群、等々、様々な絶景が次々と現れる。

また、同じ場所であっても、季節によって全く異なる佇まいを見せてくれることも特徴的だ。実際、現地で出版されている写真集の中には、同じ場所を夏と冬に撮影したものを対比しているものがあるほど。さらに言えば、気候の不安定な冬には、一日の中でも刻々と変わった表情を見せてくれる。

牧歌的な好天の風景が続いたかと思えば、急に雨やみぞれに見舞われ、寂寞(せきばく)とした風景に急転したりする。厳しく神秘的な自然の力を文字通り体感出来る国なのだ。