【前回の記事を読む】17世紀、237人もの島民が連れ去られ奴隷として売買された。アイスランドの美しき島には現在に至るまでその暗い痕跡が残っている。
第1章 自然・地理
氷河とオーロラが世界で一番容易に見られる国
COFFEE BREAK
ヘイマエイ島での野外音楽フェス
8月の最初の月曜日は「商人の週末」(Verslunarmannahelgin)と呼ばれる休日になっているが、この週末にはアイスランド各地で多くの祝賀行事やお祭りが行われる。その中で最も大きく有名なものが、ヘイマエイ島で行われる“Þjóðhátíð”(意味は「国民のお祭り」)と呼ばれる野外音楽フェスだ。
金曜日から月曜日までノン・ストップで行われるこのお祭りには(人口4000人強の島に)毎年1万数千人の本土(や海外)からの旅行客が殺到する為、通常の宿泊施設ではとても間に合わず、白いテント群が会場脇に設営されることになる(写真10)。
何故小さなヘイマエイ島でアイスランド最大の野外フェスが行われる様になったのか?
今から150 年ほど前の1874年に、国を挙げての「建国千年行事」(ヴァイキングの定住が始まったのが既述の874年)をレイキャビクで行う際、ヘイマエイ島の住民の多くもレイキャビクに向かおうとしたが、悪天候の為本土に向かう船が出航出来ず、仕方なく島に取り残された住民だけで、小さなパーティを開いたことが始まりとされ、以降、毎年その規模が徐々に拡大、今日の「アイスランド最大」と言われる規模に達したもの。
ヘイマエイ島を訪問した際に、「島の人達は、歌好きのアイスランド人の中でも、とりわけ歌好きだ」と聞いたことも、フェスの巨大化に関係しているのかも知れない。
期間中は昼夜の区別なくノン・ストップで音楽が演奏されるが、歌の他にも、花火や、京都の大文字焼きの様な巨大なかがり火も披露される。そしてフィナーレを飾るのは、国民的人気歌手で、アイスランドのフォークソングから最新のヒット曲まで、会場の参加者全員と一緒に歌いあげていく。
