白夜と極夜が美しい国
北極圏に近いアイスランドでは、夏に太陽が沈まない、或いは短時間沈んでも暗くならない「白夜」(Midnight Sun)という現象が起こる。反対に冬には日照時間が極端に短くなり、冬至には4時間前後の日照時間となる。これは極夜(PolarNight)と呼ばれる。
日照時間が最も長いのは夏至の6月21日前後。この日、レイキャビクでは午前0時少し前に日が沈み、午前3時前には日の出となる。
この日、太陽はほぼ北の方角(正確には「かなり北寄りの東の空」)から昇り、東、南、西の空に順に移動し、最後にまた北(北寄りの西の空)に沈んでいき、そしてまたすぐに朝焼けの後、地平線から昇ってくる。この白夜や白夜に近い状態は3ヶ月近く続く。
この時期の真夜中頃の西日(北寄りの西日)は強烈で、窓にかなりぶ厚いカーテンを掛けていても、寝室が明る過ぎてなかなか寝付けない状態になる為(写真11)、睡眠不足に悩まされる人も多い。

鈍感力には多少自信を持っていた筆者の実感としても、寝室の明るさに加えて、午前3時頃から始まる小鳥のさえずりの音も相当なもので、慣れるまではなかなか熟睡出来なかった。
しかし白夜にも利点がある。とにかく暗くならない為、仕事が終わった後にでもスポーツや観光を楽しめることだ。その為か、夏のアイスランドは多くの観光客で賑わう季節になる。
体力に自信のある方には、昼間の喧騒を避け、人の少なくなる夜の時間を狙って旅することも一考に値する。また、この時期には世界各地から愛好家が集まる「ミッドナイト・ゴルフ大会」や「ミッドナイト音楽祭」といった行事も開かれる。
逆に、極夜となる冬には、数時間の日照時間があるだけだ。日照時間が最も短い冬至(12 月21 日前後)には、レイキャビクの日の出は午前11時半頃、日の入りは午後3時半頃となる。真っ暗な朝、オフィスに出勤し、昼休み前に漸ようやく太陽が地平線から顔を出し、地平線を這う様に移動して、4時間後にはまた沈んでいく。
それでもまだレイキャビク市内は良い方で、北部の山間部では、冬季の3ヶ月間(太陽の高度が周囲の山より低い為)全く太陽のない生活を強いられる町もある。
ただ、暗い極夜の時期だからこそ輝きが増すものもある。オーロラもその一つだが、この時期の朝焼けと夕焼けの美しさもまた格別だ。日の出や日の入りの前後には、大空をオレンジや赤、紫等の美しい色でゆっくりと鮮やかに染め上げてくれる(写真12)。クリスマス前後の派手で明るいイルミネーションも、周囲の暗さに抗う市民の楽しみなのだろう。

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