【前回の記事を読む】「雪は時々降るが、数日で溶けてしまう」——ウインタースポーツが盛んでない“雪国”アイスランドの真実

第2章 気候

日照(ビタミンD) 不足解消の為、国民の大多数が毎日肝油やサプリを飲む国

既述の通り、冬のアイスランドでは、短時間空に太陽が昇っても、地平線を這う様な低い高度で移動する為、日照時間が極端に短くなる。平地でそうなのだから、周辺に山が迫っている場所では、一日中全く太陽が見られない日が続くことになる。

特に、高緯度(北部)にある町や村ではそうで、例えば北部のシグルフィヨルズル(Siglufjörður)の町(人口3000人の漁村)では、毎年11月の中旬には太陽が完全に隠れ、何と2ヶ月半の間、暗闇の中での生活を強いられる。

同地では2月上旬、2ヶ月半振りに空に昇った太陽を“sólarkaffi”(直訳すると“太陽のコーヒー”)として祝うという。同地では古くから、“sólarkaffi”の日には、住民が教会に集まり、歌を歌い、パンケーキを食べて太陽復活日を大々的に祝うそうであるが、その気持ちはとてもよく分かる!

同地ほどではないにしても、冬にはアイスランド全体で極端な日照不足に陥ることは確かであり、筆者の様な外国人にとっては特に厳しい季節だった。地元の人はいくらか慣れているのだろうと思うと、そうでもない。

極端な日照不足が心身に与える影響に慣れはないようで、殆どの人が肝油やビタミン剤を毎日服用しているし、休暇となると太陽を求めてスペイン南部や地中海等に旅行する人が多い。

因みに、肝油はアイスランドの特産品とも言えるタラの肝臓から抽出されたものが最もポピュラーで、筆者も現地スーパーで最大手L社の肝油を購入、毎日服用していた。

COFFEE BREAK
アイスランド人だらけのテネリフェ島

日照時間が極端に短くなる冬には、多くのアイスランド人が太陽を求めて地中海方面に休暇旅行に行く。この傾向は夏であっても不順な天候が続く時にも同様である。

特に天候不順に悩まされた2017年の夏には、夏季休暇で南国のビーチ・リゾートに向かうフライトの予約が前年比50%も増えたほどだ。人気が高いのが、地中海方面で(ギリシャの南に浮かぶ)クレタ島やアフリカ大陸北西の大西洋上に浮かぶスペイン領の「カナリア諸島」。

その中でも最も大きな島「テネリフェ島」は、「大西洋のハワイ」とも呼ばれ、世界的に人気が高いが、アイスランド人にとっても例外ではなく、知人のアイスランド人によれば、「街中、アイスランド人だらけだった!」とのこと。

もちろん実際には、他国からの観光客も多かった筈だが、小規模な村社会でお互いを知る人達が極端に多い彼らの目にはまさに「アイスランド人だらけ」と映ったのであろう。