「デジタル家内制手工業」から脱却する方法とは?
ここで「デジタル家内制手工業」に陥った会社の典型的な姿を図2-4に示そう。
DXの波の中、多くのデジタルツールが部門間の調整もなく導入されていく。当然、ツール間の互換性はなく、さまざまなフォーマットが乱立し、それを手動で変換したり、データを切り貼りしたりしてツールをつなぐ。
つまり、人による手作業がデータ流通の間に入り、リアルタイムのデータ流通を妨げ、そこに誤りも混入する。製造現場には、Excelの各種帳票が散らばり、だんだんと収拾がつかなくなったところで、Excelマクロを組めるデジタル職人が現れなんとか運用を回す。
これが製造業の実態であろう。実際、訪問したほぼすべてのメーカーのマネージャの方々は「まさにうちはこの状態です」と嘆いていた。では、デジタル家内制手工業から脱却するにはどうしたらよいだろうか?
ものづくりに関わる情報を設計の基幹モデルである3Dモデルに集約し、それを全社に流通させ、各部門でそのデータに価値を付加し、徹底的に活用してはどうだろう。それが実現できれば「製造業DX×3D」と呼べる(図2-4の下部)。

図2 - 4 データを流通させることで、デジタル家内制手工業から脱却する
統一フォーマットによる情報を部門間でやりとりし、部品表や工程情報などは部品番号をキーに自動で統合し、そこから後工程が見たい形式で情報を引き出せば、現場の求める情報を自動的に生成できる。
普及価格になってきたVR機材を使えば、実機がなくても3Dモデル上で検証も可能だ。そこから作業指示書を自動生成し、先進のAR技術を使って、現物上で指示を確認する。このような世界がすでに実用段階にある。