【前回の記事を読む】両親を亡くした私を大切に育ててくれた近所のおじいちゃん。でもおじいちゃんは本当の娘さんに呼ばれて都会へ…会いたい。
家族の中の孤立
2人はカーティムのパン屋さんで、毎日一生懸命働いた。カーティムはパンのこね方や焼き方をていねいに優しく教えてくれた。2人とも真剣だったのでどんどん技術が上達した。
大都会島では、計算能力の成績を見せてから仕事が決まるのが一般的だったが、他の職種はわからないものの、この島では顔を合わせただけで決まるんだなぁと、ぽろもきは働き出してから数日後に思った。
そして、そんなことを後になって気付くほど、冷静でなかったのだと自身を振り返った。しかし、あの時は自分でも信じられないくらい、積極的に働きたいことをアピールしたと思った。
大都会島では役立たずの人間として暮らしていたけれど、この島に来て、のとと出会って、ちょっぴり自分が変わったような気がした。パン屋さんの仕事を見つけて、今では2人で働いている。そんな自分が少しだけ誇らしかった。
後はちゃんとお金をもらって、のとが無事におじいさんのところへ行けるようにならないと意味がないとも思っていた。最初の給料が出るまで、カーティムは毎日パンを残してくれて2人にくれた。
のとは、おじいさんと暮らしていたアパートに帰って、パンを食べながらおじいさんと過ごした幸せだった日々を思い出していた。
そして時々、ぽろもきのことも考えるようになっていた。明日は、ぽろもきの今までの暮らしのことを聞いてみようと、のとは思った。時おり見せる悲しい表情が気になっていたのである。