【前回の記事を読む】やっぱり行かないで。ずっと一緒に働いていて――のととの別れは辛く、苦しく。ぽろもきはの目からは涙があふれだした

家族の中の孤立

のとは、おじいさんから届いた手紙に書いてあった住所を訪ねた。

その場所にあったのは、古くに建てたと思われる一軒家だった。家を見た瞬間、のとは嫌な予感がした。手紙に書いてあった“広い庭”など全くなかったからである。

おじいさんはうそを言ったり、からかったりするタイプではなく、まじめで優しい人だった。身寄りのないのとを、孫のように可愛がって育ててくれた人である。

ぽろもきと離れて、カーティムの店も辞めてここまで来ているのだから、訪ねるしかないと自分に言い聞かせて玄関の呼び鈴を押した。

「はい。どちらさまでしょうか」

女性の声で中から聞かれたので、「ごめんください。のとと申します。おじいさんから手紙をもらって来ました」と答えると、ドアが開いて娘さんが出てきた。

「もしかしたら、前におじいさんが一緒に暮らしていたという女の子かしら」

「そうです。のとです。おじいさんから、また一緒に暮らそうという手紙が届いたので訪ねて来ました」

「そうですか……。どうぞおあがりください」

家の中には、娘さんの旦那さんと小さな男の子がいて、笑顔で迎えてくれた。おじいさんは車椅子に乗って、笑顔で手を振っていた。

「おお、のと。よく来たな。ゆっくりしていけや」