【前回の記事を読む】最前列ほぼ正面なのに舞台を見ず、読むでもなくただ単にページをめくり続けている男。「つまらないから見なかった」
第四章 2015年(後)
10月19日(月)
手術日決定
ようやく良子の手術日程が決まった。
30日入院、11月2日の手術。
「がん研 有明病院」のセカンド・オピニオンを受けた先生ともつながるB先生の診察室を訪ねた。患者に医師の「腕」は分からないので、これは一つの安心ではあるが、実際には何の保証にもならない。医者の腕は、患者には比較しようがないのである。患者は常に一発勝負、復元やり直しはできない。
9月12日に入院して、手術日まで50日になる。実に悠長な対応に思えるが、緊急手術で開腹されていたとして、それが良かったのかどうか。それが良かったかもしれない。分からないのだ。
旧友と久しぶりに電話で話し合った。
奥さんががんだったので様子を聞いた。「がん研 有明病院」で大腸がん、腹腔鏡下手術を受けてから6年、現在も元気である。
「がんと分かっていた訳ではないが、かつてがん研で治療を受けた知人の紹介でがん研のセカンド・オピニオンを受けた。画像を見るなり、これはがんだ、即日入院、あっという間に手術になった」
「うちは50日や。のんびりしとるなあ」
「そりゃ、そんなに緊急と思うとらんのやろ」
「うん、そんな風にも、希望的にとっている」
夜、良子に話したら、
「赤十字は、どうせ手遅れや、思うとるんちゃうかな」
という。
いずれにせよ、もうじたばたできないのである。
B先生の印象は、医者にしては声が大きく、はきはきしていた。好感を持った。好感を持つ以外の選択はないのである。この人を頼るしかない。手術は腹腔鏡下によって行われ、入院期間は(何もなければ)1週間、11月9日の退院になる、とのことである。あっけない、と言えば言える。但し、どのような検査をしても検査だけでは見えないものがある、何があるか、やってみなければ分からない、ということであった。
要は、分からない、人の命なんて。