【前回記事を読む】スターはみんなナルシスト? 自らの美貌に酔いしれた男たち。そんな男たちもスクリーンを出たら、まるで別人のようで......
序章 ローマの流行作家 自信家たちのエピソード
ナルシストたちのエピソード
Jが出演した、私の最も好きな映画の一つを手掛けた映画監督も同席していたと記憶しています。
Jは、映画ではいつもコミカルな役ばかりでしたので、人間的にも面白い人だと思っていたのですが、素顔の彼は物静かで、一座の中ではいつも聞き役に徹していました。
しかもとても紳士的で、柔和な微笑を絶やしません。同伴していた夫人もまた控えめで、物静かな女性でした。ハリウッドスターとして、世界の注目を集めている人の中にも、こんな地味な人がいるのかと驚きました。
その当時は70年代の初頭でしたが、夏のローマを訪れるハリウッドの映画関係者は、とても多かったのです。観光と撮影の仕事の両方を兼ねていたのでしょう。世界中の映画関係者が次々とローマを訪れるので、ルチアノは接待やら案内やらで、東西奔放の忙しさ。
たまたま私がローマに行ったときに電話をすると、「悪いけど、今日も映画スターの ○○と食事の予定なんだ。君にも同席してもらうことになるんだけど」と恐縮しながら言いました。私が同意すると、彼は多忙にもかかわらず、マセラティを飛ばして迎えに来てくれたものです。
ルチアノとの関係を、周囲の人にいろいろ誤解されましたが、彼から提案されて奇妙な関係を断ったあの初デートの日から、私たちは、男女の関係を超越した、さっぱりした友情で結ばれていました。
仮に、ルチアノと深い関係になっていたら、とてもあのように、いろいろな人脈を紹介してもらえるような状況にはならなかったでしょう。
彼はもともと人付き合いのよい性格で、作家で独身という立場から映画全盛時代の当時のローマで、世界のスターたちや、映画界の重鎮の案内役を買って出ていたようです。
本来なら、私のことなど構っていられないほど多忙な毎日を送っていました。 また、当時の日本は16パーセントという驚異の経済成長率を誇っており、先進国の先頭を走っていました。強いものや優れたものに傾倒しやすいルチアノは、日本人に大きな関心を寄せていました。そんなことが、日本人である私を大切にしてくれた理由だったのではないかと思います。