それから一年程が経った冬のことです。波風一つ立たないような穏やかな日常に悪霊の息吹が吹き込んできたのです。雨が幾日も降らず、厳しい寒さも相まってここ最近例を見ない程の大飢饉が朝鮮全土を襲っているのです。腹を減らし、心身共に余裕がなくなった人々が僅かばかりの気力で食料を求め、他者には暴力的にさえも成り果てた姿が何処を見渡しても絶えませんでした。

ユンはこの事態に手を打とうと年貢を減らし、備蓄していた穀物を配給していきました。迅速な対応の甲斐あって、人々は最低限の生活水準を取り戻し、最悪の事態を免れることができました。然し、いつ凶作から脱することができるか見通しがつかず、備蓄にも限度があるため、少しずつ王宮でも倹約を勧めていきました。

歴代王にも引けを取らないユンの政策を称賛する民の声が、当然ながら次から次へと湧きあがっていきました。そしてその声はヨウを通じてユンの耳にも届きました。

「耳を澄ましてみてください。王様を聖君と謳う声が四方から聞こえるはずです」

左様かと満足げな様子のユンに対し、優しく微笑みながら続けました。

「私が申し上げたことをお覚えですか。運命を切り開くのは王様自身であり、王様の比肩星は力強く輝いていると。この意味は既に身を以て感じていただけたのではないでしょうか。王様の思うがままに、欲するがままに進まれるのが正しき道だということです」

この言葉が当時のユンを大いに励ますのですが、後に破滅への誘いと化すことをまだ知る由もなかったのです。

 

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