「あの占いのことを信じるつもりは毛頭ないのに、これ程酷似した夢を見たというのがあまりに恐ろしかったのだ」

吐き捨てるように語るユンに水をもう一杯飲ませると、ジンは穏やかな口調で言いました。

「幸せなことに私は、王様が民のために政治をされるお姿を間近で見てきました。その私から申し上げればそのような王様に向けて誰が謀反等起こすことができましょうか。仮にできたとしてもこの私がいる限り、それを成就させることは不可能です。

如何なる時も王様をお守りし、お力添え致しますので、私を信じてひたすらに民を慈しむ善政を進めてください」

その言葉を聞いてユンは相当安心したようで、先程までの呼吸の乱れや冷や汗はすっかり収まっていました。

朝陽も昇らないうちに体を起こして政務の続きを進めるべく席に腰を掛けました。暫くの間上奏文を読み進めていましたが、疲れが残っていたのかあまり集中できなかったようです。そうかといってもう一度眠る気にもなれませんでした。

ユンの中にはヨウの占いと、それ以上に舞のことでいっぱいだったのです。ユンはヨウを再び呼び、舞を踊らせました。ヨウの舞を見ていると占いのことなど忘れて初めて見た時と同じように心から楽しめることに気付き、たいそう気に入りました。舞が終わると満足げなユンでしたが、それでも占いのことが気掛かりだったのか、そのことを持ち出しました。

「そちがした占いのことを覚えているか。余は今も完全に信じるつもりはないが、よく考えれば現実味に欠ける話でもないと思ってな。そちは余の助けになれるか」

そう尋ねるとヨウは静かに口を開いて答えました。

「恐れながら王様、私含め周りができるのは僅かばかりの助言程度です。ご自身だけが運命を切り開けるでしょう。然し、王様の比肩(ひけん)星はよい方向に強い輝きを放っています。慌て過ぎず、十分に備えるようにしてください」

ユンはその日からヨウを女官として王宮入りさせ、時折呼び出しては舞や話を楽しむようになりました。