【前回の記事を読む】おぞましい夢を見た。謀反が起こり、私は炎の中逃げていた。親衛隊は皆切られ倒れ…そこには官服を着た誰かが立ちふさがっていた。
魔女の涙
五
ユンを称える声が広がる反面、それをよく思わない派閥も健在でした。
彼らはユンのことを、倹約を勧めながらも自身は女遊びに入り浸っている、著しい年貢の増徴をしようとしている、と負の側面ばかりを強調するのでした。
ユンの功績は偉大なものではありましたが、人というのは強い生き物ではありませんので、負の要素が見えてくると不安になるものです。
そのため、ユンに反対する派閥の大きな声に惑わされる者も現れつつあったのです。然し、ヨウに励まされたことで自身の政策に大きな自信を抱くようになりました。
そのようなユンにとってこれ程までに反対の声が広がるのは不自然だと考えたのです。そしてユンは派閥の調査を始めました。数日後、サホンと居所で話している時に親衛隊のジンが報告にやってきました。
その派閥を先導し、資金回りを担っているのは、臣下の一人のジャグァンという者だったと、裏帳簿から発覚したのです。
ジャグァンはサホンに続く権力の持ち主で、ユンに近い存在の一人でした。更にサホンはここでとんでもない事実を口にしたのです。
「先王様に口止めされており、亡くなられた後に申し上げようと思っていたものの、
とても申し上げられませんでした。あの者は今回の件のみならず、王様の母君の廃位にも関わっております」
これにはユンも動揺を隠せず、悪魔のような形相で身を乗り出し、サホンに迫りました。
「もう一度申してみよ。虚言であれば、たとえそちでも許しはせぬ」
一歩間違えれば殺しかねない様子のユンを前に、さすがのサホンも若干の動揺を漏らしながら答えました。
「この不忠をお許しください、王様。然し、あの者を始めとする大臣達と先王様が結託し、無実の母君を陥れたのです」
ユンは何も言葉を発することなく、蒼白い頬にひたすら涙を流すばかりでした。