これまでユンの唯一無二の友として慰めてきたジンも、この時ばかりは何と声を掛けるべきか分かりませんでした。ただただユンを哀れむような眼で見つめることしかできません。

サホンも続きを話そうとしましたが、ユンの心情を察したのか、これ以上は何一つ言葉を発しませんでした。サホンの考え通り、この時ユンの中で何かがはち切れる音がしました。

母を陥れた者達を粛清すべく、地獄の鬼の形相で正殿へと向かいました。ヨウの言葉通り、煮えたぎる感情のままに。

正殿へ着くと、いつもと変わらぬ光景が広がっていました。異質な雰囲気を醸し出しながらユンは玉座に腰を据え、冷徹な声色で言葉を発しました。

「知っての通り、現在大飢饉の中で対策を進め、皆にも倹約を実施してもらっているお陰で民の暮らしは最低限の水準を保っている」

全ては王様のお陰でございますと口を揃える大臣達に対し、ユンは冷徹且つ無慈悲な視線を向けながら続けました。

「然し、皆本当にそう思っているのだろうか。でたらめな言い分で余を否定し、莫大な金を使ってまでして民を煽っている者がいるそうだ」

玉座から立ち上がり、ゆっくりと進んだ先はジャグァンの元でした。そして身も

凍る圧を掛けて尋ねました。

「そちが民や派閥を統(す)べていることを余が知らないと思っているのか。そちの裏帳簿は全て調べきっておるのだぞ」

ジャグァンは絞ることができる程の汗を全身から流しながら跪(ひざまず)き、ユンの圧に潰される中で口を開きました。

「これは何かの間違いでございます、王様。私は無実でございます。何者かに陥れられたのでございます」

この世のものとは到底思えない憎悪を含みながら、ジャグァンを睨んで言いました。