【前回の記事を読む】無実を主張する大臣を無視し、刀を抜き取り一切の躊躇なく切りつけた。明確な殺意を持って深々と。そして、男が口を開く。

魔女の涙

ユンの残虐さと堕落は民の耳にも入り、以前のような称賛の声は、跡形もなく消え去りました。

ジンは狂いゆくユンを止めたいと思う一方、その不遇な背景も理解できてしまうので、どうするべきか分からなくなっていました。

一度は変わり果ててしまったユンの元を離れようとも思いました。それでもジンの脳裏に過(よぎ)るのは、かつて境遇に関係なく人を受け入れ、自身もそれを乗り越えようと努めたユンの姿でした。

あと一度だけ聖君としてのユンを拝みたいという想いが、ジンの足を止めたのです。自分ではどうすることもできないと感じ、最後の手段に出ました。

凶作が続いて数か月の間、雨が降ることもしばしばあり、回復の兆しが見えつつありました。然し、半年以上が過ぎると再び雨が降らず、更には納める穀物量の増加も相まって、飢饉の第二波とも言える状況がやってきました。

民の暮らしが、かつてない程に疲弊しているのは明らかであり、ユンへの不満は高まるばかりです。そのようなことなどお構いなしに女遊びや豪遊に浸るユンとヨウの元にジンがやってきて言いました。

「王様、雨も降らず、年貢が増加する中で民の暮らしは疲弊するばかりです。何か策を講じなければなりません」

それに対してユンは適当な返事をします。

「今は忙しいのじゃ。これまで余が甘すぎたのかもしれぬ。作物が育たないなら別の作物でも採って食いつなげばよかろう」