骸骨は和美の隣に腰を降ろした。すると彼女はすっと間を空け、心なしか顔を背けたようだった。それが少し気がかりだったが、骸骨は慎重にことばを探していた。どう切り出したものかと思案に暮れていたのだ。だがあの男が現れた以上、もう先送りはしていられない。

「三年ガ経チマシタ、潮時デス‥‥モウ逃ゲルノハ止メマショウ」

「何のこと、わたし別に逃げてなんか‥‥いない」

「一度オ友達ノオ墓ニ行ッテ、大好キダッタ花ヲ手向ケテ上ゲテ、ソシテ一言ゴメンネト謝ッテ、ソレデ終ワリニシマショウ」

「悦子ちゃんのこと? 違うわ、あの時倒れて頭を打って、それでこうなったの。悦ちゃんのせいじゃないわ」

骸骨は洋子のことばを思い浮かべていた。和美の頭のケガはたん瘤程度だった。それは光を失った原因ではないのだ。骸骨はふっと吐息を漏らした。別に鼻で嗤った訳ではなかった。上手くことばが見つからなくて困惑しただけだった。だが和美はカッとなった。

「何よ、ウソつき、ひ、卑怯者」

「エ、何ノコトデスカ?」

「見えないからって‥‥黙っていたんでしょ。お姉ちゃんだって、知っていたのに‥‥みんな大嫌い」

最後の方は半ば悲鳴に近かった。和美はそのまま身を硬くしていた。握った手がぶるぶると震えていた。

    

次回更新は3月28日(金)、11時の予定です。

 

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