二つ目の問題は、風呂がなくシャワーも冷水しか出ないことである。インドネシアでは冷水シャワーが普通であるが、いくら熱帯とはいえ、水のシャワーはつらい。特に雨季は日中の温度が上がらず、水も冷たく、たまにはゆっくりと温かい風呂に入りたくなる。

三つ目はデポックのような外国人の少ない都市では、生活のベースが日本人になじみの薄いイスラム教であるということである。朝四時ごろに近所のムスジッド(モスク)からアザーンが大音量で鳴り響くので、目が覚めてしまい、そのまま眠ることができないこともある。

さらに、ショッピング・モールに入っている大型スーパーマーケットでもアルコール飲料や豚肉は販売されていない。レストランや食堂にも酒類は置いていないし、豚肉料理を食べることのできるレストランもない。

それでもインドネシアの人々の日常生活を間近で見ることができ、私にとって感動の日々であった。大通りから一本裏道に入ると、ゴミの散らかった道路を日焼けした子供たちが裸足で走り回り、アイスクリーム売りが間の抜けた電子音を鳴らしながら自転車のペダルをゆっくり漕いでいる。

人相の悪い痩せこけた男が、子供向けの風船やおもちゃを自転車の荷台に満載して通り過ぎ、鶏が土の上を忙しく走り回る。民家の軒にはカラフルな洗濯物がぶら下がり、どこからともなくダンドゥットが聞こえてくる。

次回更新は3月14日(金)、18時の予定です。

 

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