その人を懲らしめるために、いい方法を思いついたというのだ。自分が考え出した名案のように父は得意げだったが、聞いていると、なんと、その人の家にくり返し無言電話をかけてやると言うのだ。

父は〝無言電話〟という言葉は使っていなかったが、この時、父が得意になって言っていたことは、紛れもなく無言電話をかけることだった。私は呆れてしまった。当時、私は中学生だったが、無言電話という言葉は既に知っていたし、実際に無言電話による逮捕者も出ていたと思う。

私は呆れて何も言えなかった。父はニュースを欠かさず見ていたし、新聞も私よりはるかに詳しく読んでいたはずである。それに父は、大学では法学も教えていたのである。無言電話がれっきとした犯罪だと知らなかったのだろうか?

これはいくら考えても今も不思議だが、心の中でそう考えたとしても、それを子どもに得意げに言う神経は理解できない。実際に父がその家に無言電話をかけることはなかったと思うが、とにかく父には、少なからず常識から外れた部分があった。

そして、世界は自分を中心に回っているのだと思い込んでいるのではないかと疑いたくなるくらい自己中心的だった。実際に家の外でもそんなふうに振る舞う上、羞恥心の一部も欠落しているような人なので、そばにいる者にとっては大迷惑であった。

 

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