はじめに

子どもは親を選ぶことができません。

そして、いわゆる〝毒親〟のもとに生まれてきてしまった子どもは、きわめて不本意な人生を送ることとなるでしょう。

私がこの世で最も軽蔑する人は、私の両親です。

自分の親だから、育ててもらったからという理由だけでは、とても大目に見ることはできません。なぜなら、私の両親の言動によって、人生がズタズタになってしまった人が、間違いなく一人は存在するからです。

私の両親は、何の罪もない一人の心優しい女性を苦しめ、彼女の身も心もボロボロにしてしまったのです。

私も両親にはずいぶん苦しめられましたが、両親が苦しめた相手は、実の子どもだけではないのです。

世の中には様々なタイプの親が存在するかもしれませんが、少なくとも私の両親は、親になってはいけないタイプの人たちだったと思います。

〝親になって初めて親の気持ちがわかるようになった〟という言葉は、よく耳にする言葉です。しかし、私にこの言葉は当てはまりません。

むしろ、私の場合はその逆でした。

私は親になって、ますます自分の親の気持ちがわからなくなったからです。

それどころか、自分が子どもの頃に、親から受けた不快な思いと同じような思いだけは、自分の子どもたちには絶対に味わわせたくないという思いで、子育てに臨んでいました。そして、それは確かに間違っていなかったと思います。

そういう意味では、私の両親はきわめて優秀な反面教師であったといえるかもしれません。もちろん、私の両親も悪魔ではなく人間なので、良いところもあります。

人間の性格とは複雑で多面的で、一言で言い表すことは難しいと思います。単純に〝善し悪し〟という言葉だけで片付けることはできないでしょう。

要は、自分の周囲の人にどれだけ嫌な思いをさせ傷つけたか、どれほど迷惑をかけたか、かけなかったかということだと思います。