【前回の記事を読む】【毒親】高校生の貸し切り車両のど真ん中を陣取る父親。「何や、おまえ、恥ずかしいのか」何か言えばこう返されるに決まっている

両親の結婚

高校生の団体ということは引率の先生もいるわけで、当然のことながら、二時間の間にその人が通路を歩くこともあった。その際にその人が、私たちが座るために敷いていた新聞紙の端の方を少しだけ踏んだのである。その瞬間、父は声を荒げてこう言った。

「ちょっとあんた! 何踏んでるんや!」

どう考えても、邪魔をしているのも迷惑をかけているのも私たちの方である。しかも踏まれたのは、使い捨てにする、たかが新聞紙である。それに、その人が通りやすいように、父が体をよけて新聞紙をどけなかったから、踏まざるを得なかったのだ。

「済みません、邪魔をして……」と済まなそうに言いながら、体をよけて通路を空けてあげるのが普通ではないか。なぜそんな些細なことで、いちいち怒りを剥き出しにして声を荒げるのか、私には理解できなかった。

その人が父よりずっと若い人だったので、父は強気で文句を言ったのかもしれない。

幸い、その人は父のことを相手にせず、「あ、済みません」と言って低姿勢だったので、それ以上、状況が悪くなることはなかったのだが、私たちが通路を塞ぐように座り込んでいたため、結局、その人はその場所より先に進むことを諦めていた。

私は身が縮む思いだったが、その感情も顔に出さないようにポーカーフェイスを装いながらも、ひたすら早く時間が過ぎることだけを祈っていた。

父の、この日の振る舞いは、まさに横暴な父の性格を象徴するような行為だったと思う。