【前回の記事を読む】「いつまでも同じことを何べんも言うなーーーー!!!」腹の底からしぼり出すような大声で私は父に向かって怒鳴っていた
両親の結婚
父
父と母と三人で京都市内へ車で出かけた時のことである。
京都は観光地だが、駐車場が充実しているとはいえず、いつも車を停める場所を探すのに苦労するのだが、この日も駐車するところに困っていた。
突然、父はこの近くに銀行があるから、そこの駐車場に停めさせてもらうわと言い出した。頼んでくると言って銀行の中に入っていったが、まもなく憤慨した様子で出てきた。
その直後、若い男性行員が二人、あわてた様子で父の後を追いかけるように小走りで出てきた。
よく聞こえなかったが、父が悪態をついているように見えた。この時、母は助手席から泣きそうな顔で哀願するように父にこう言った。
「あんた、やめときなさい。よそへ行こうよ」
この時の母の哀しそうな横顔は、今でもはっきり覚えている。私も後部座席から、「よそへ行こう」と言ったが、この時は父も母の辛そうな顔がこたえたのか、自分の無体さに気づいたのか、素直に引き下がっていた。
無断で駐車しなかっただけましだともいえるが、自分の思い通りにならないと感情を抑えられないのか、子どもみたいにすぐに怒りをあらわにする人だった。
私は中学生くらいの頃から、父とどこかに出かけることには抵抗を感じるようになっていたので、親との旅行など行きたくなかったが、強引に行こう行こうと誘ってくるので断り切れないこともあり、しぶしぶ、ついていくことが多かった。
下手に逆らって父の機嫌を損ねてしまうと、かえって状況を悪くしてしまうことにもなりかねないからである。
思春期の子どもに限らず、親との折り合いが悪い子どもが、親に反抗したり非行に走ったりするケースがあるが、そういうことができる子どもの親は、まだ優しい親なのではないかと思う。
親が怖くないから、反抗することもできるし非行にも走れるのである。本当に怖い親の場合は、恐ろしくて非行に走ることはもちろん、反抗することさえできなくなる。