登山の後で疲れていたわけでもあるが、せめて車両の端の方に遠慮がちに座れば良いものを、さらに悪いことに車両のほぼ中央に陣取ったのである。

当時の私は思春期真っただ中の高校二年生。周囲は、私と同年代の男子高校生数十人で座席が埋め尽くされているのである。

そのど真ん中で、両親と三人、地べたに座り込んでいるようなものなのだから、もう最悪である。私の人生でこんなに惨めで恥ずかしかったことはない。

今思うと、共学や女子校よりは男子校でまだましだった気がするが、この時の気分は、もう勘弁してくれという悲惨な心境だった。

私はよっぽど自分一人でも別の車両か端の方に移りたかったが、余計なことを言うと、父は絶対こう言うのに決まっている。

「何や、おまえ、恥ずかしいのか」

次に父が言うセリフも私にはわかっていたので、私は腹を決めて我慢することにした。ここで父と問答して周囲の注目を浴びることは、もっと恥ずかしい。

旅の恥はかき捨てだ。二時間辛抱しよう。この時、母は何も言わず父に従っていたが、母は平気だったのだろうか。

周りの高校生たちはとても静かで騒ぐこともなく、私たちの存在を無視してくれていたので幸いだったが、二時間が無事に過ごせたわけではないのである。

 

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